黒いジャガー

黒いジャガーは、1971年のアメリカ映画で、
監督 ゴードン・パークス、原作 アーネスト・タイディマン
キャスト リチャード・ラウンドトゥリー、モーゼス・ガン、チャールズ・シオッフィ、クリストファー・セント・ジョン
自分を探しているふたり組がいると聞いた黒人の私立探偵ジョン・シャフトは、2人組に出会うと格闘の末、ひとりが窓から落ちて死んでしまうのだ。なじみの刑事に協力を求められたジョンは、それを突っぱねるのだが、話に出たギャングの親玉であるバンビーと連絡を取るのだ。白人と対等に渡り合ってくれる黒人探偵シャフトが黒人の観客に大受けで大ヒットしたブラック・ムービーで続編も作られたのだ。なんといってもアイザック・ヘイズによる音楽がとても格好いいのだ。
スパイク・リーなりのブラックな映画を見ていると必ずといいほど名前が出てくるのがこの黒いジャガーなのである。このムービーは黒人にとってはひとつの金字塔であったのだが、なんでもここからブラック映画の歴史が始まったといっても過言ではないというのだ。ハリウッドというものが長いこと白人によって支配されていまして、黒人は脇役で、しかもほとんどが敵役か召使の役に押しやられてきたからなのであり、黒人が主人公のムービーなど皆無に等しかったというではないか。
歴史は変わっていくのだ。なんとハリウッドが観客として黒人をマーケットと認めたということが最大の理由なのだが、ハリウッドが売り上げをあげるために、黒人がハリウッドを動かせるようになったということなのだ。
伝説的なブラック映画「スウィート・スウィートバック」も71年の作品なのだから、1971年はまさにブラック映画の元年だったというのだ。想像も出来ないが、71年はそういう時代だったということなのだ。
この映画を見ていると、非常にオーソドックスな探偵ものに写るのだ。主人公のシャフトは確かに格好いいですね。強固な意志を持っていて、脅しには決して屈しないし、なんといっても正直なのである。彼が黒人のギャングのボスに頼まれて誘拐された彼の娘を探すのだ。彼はそれを警察に告げることはしなかったのだが警察ともうまくやっているではないか。彼はスーパーマンではないが、失敗したりやられたりもするのだが、なんと意志の強さとスマートさで解決に向けてまっすぐに進んでいくではないか。なんでも暴力に訴えるのではなく、頭を使ってスマートに解決するというところが、非常によかったと思うのだ。派手なアクションで敵を倒したほうがエンターテインメントとしては楽しいのかもしれないのだが、黒人という弱い立場の彼が探偵として成功していくには何よりもまずスマートだが必要だったのだ。観客である黒人たちと白人の共感を得たのではないかと思うのだ。
警察の側で彼の相棒になる白人の刑事の存在も大きいのではないかと思う。
彼がいるおかげで映画として理解のある白人を登場させることで白人の観客の反感を抑えることが出来ているし、白人と黒人の理想の関係を描くことが出来ているというのだ。黒人と白人の相棒の関係というのは脈々と受け継がれているらしいので面白い作品を生み出しているのではないかと思うのだ。
「シャフト」はブラック映画の歴史に名を残す作品なのだが、同時にハリウッドの刑事ものの歴史にも大きな影響を与えた作品ということなのではないだろうか。