細雪

細雪
1983年の日本映画,140分
監督 市川崑、原作 谷崎潤一郎
キャスト 岸恵子、佐久間良子、吉永小百合、古手川裕子、石坂浩二、伊丹十三、岸部一徳、桂小米朝、江本孟紀、細川俊之、三宅邦子、小林昭二、上原ゆかり、仙道敦子
時代は昭和十三年で京都に花見になんとかやってきた蒔岡家の四人姉妹と次女の婿の貞之助でした。長女の鶴子は、銀行員の辰雄を婿にとってしまって本家を守っているのだ、次女の幸子は、デパートで働いている貞之助を婿にとって分家を作ってしまっている。雪子と妙子というふたりの妹を引き取ってしまっていたのだ。もっぱらの話題は、雪子の縁談なのだが、そこに「5年前の事件」が暗く影を落とす…というストーリーなのだ。
大阪の旧家を舞台にしていて、四人の姉妹のそれぞれの一年を面白く描いている谷崎の小説の映画化なのだ。四人の姉妹がそれぞれのキャラクターに時代がこめられいるようなのだ、市川崑監督が一風変わったような雰囲気を醸し出している映画に仕上げているというではないか。
この映画は、おかしいのではないかと思うところがある。面白くないということではなくて、とにかくおかしくて、それが面白いのである。原作ではおかしさは感じられなかったが、谷崎小説には常におかしさが漂っていて、艶やかな魅力ともなっているのだが、原作にもおかしさがあったのかもしれない。映画化されておかしさは加速度的に増しているようだ。
象徴的なのが映画の始まり方でなのである。映画は花見のシーンから始まっているのだが、原作はそうではなかったのである。原作は4年以上に渡るストーリーだし、映画は1年のストーリーなので物語が変えられてしまっているのだ。
原作と違うということではなく、花見のシーンを冒頭に持ってきたということなのだ。花見のシーンの桜は美しいというものを超えて色彩を放つ。桜という花が人を狂わせてしまう花であることが、桜のシーンからは狂気の匂いが漂ってくるのだ。雪子の見合いの相手の母親が精神病であるというご丁寧なエピソードまで挟まれるではないか。この映画には狂気が付きまとうのでは、という予感ができるのだ。