母べえ

『母べえ』
古きよき昭和の時代の戦争を前にした不安定な昭和に生きた家族の物語なのだ。
父のアイデアで、家族はお互いに「べえ」をつけて呼ぶことにしたのだ。だから母のことを「かあべえ」と呼ぶことになったのだ。そんなあたたかなほんわかした家族だったのだが、ある日父べえは思想犯として逮捕されてしまったではないか。ひどい。
それからというものは、母べえと姉妹のつつましい生活はさまざまな苦労の連続の渦の中となってしまうのだが、父べえの教え子の山ちゃんの思わぬ訪問をきっかけに、つつましくもあたたかい日々が始まってしまうのだ。
吉永小百合の演技というのをしっかりと見ました。有名で伝説の人というイメージです。今回は吉永小百合という女優の演技をしっかり鑑賞したわけです。
感想は「大いなる母性」。まさに昭和の母ですね。強く賢く優しくしなやかで、包容力があり芯が通っていて、絶えず笑顔を見せてくれる。すばらしい女優である。
昭和の戦争にはいる直前の不安定な日本という設定で、侵略を聖戦と呼ばなければ、拘置所からも出られない世相であったのだ。直接の残酷な戦争そのものを描かずに、山田洋次監督の目は戦争のむごさに向いている。母べえのすばらしいところは、ラストシーンに凝縮されています。戦争とはむごいものなのだということが伝わってくる映画なのだ。