映画盗撮に厳罰、海賊版対策で防止法案提出へ

 映画の海賊版DVDなどを防ぐため、映画館で上映中の映画をビデオカメラで撮影することを禁じる新法案が、3月にも国会に議員立法で提出される見通しとなった。

 自民党の一部議員が準備している「映画の盗撮防止に関する法律案(仮称)」では、許可なく映画を撮影すると、10年以下の懲役か1000万円以下の罰金という厳しい罰則を設ける方向だ。映画をビデオカメラで撮影するだけでは犯罪にならない現状を改め、海賊版の横行に歯止めをかけることを目指す。

 最近は、話題の新作映画が封切りされると、高性能のビデオカメラで盗撮された映像が、すぐに海賊版DVDとして販売されたり、インターネット経由で配信されたりするケースが後を絶たない。昨年5月に世界同時公開された「ダ・ヴィンチ・コード」の場合、公開翌日には海賊版DVDが出回っていたという。国内の試写会会場で何者かに盗撮され、その映像が流用されたと見られている。

 著作権法では、海賊版DVDの製造・販売は5年以下の懲役か500万円以下の罰金が科せられる。しかし、映画など著作物を個人で楽しむ「私的使用」なら、複製を原則として認めているため、上映中の映画をビデオ撮影するだけでは著作権法では取り締まれない。

 全国の映画館では上映前に盗撮防止を求める映像を流したり、盗撮をみつけた場合の職員対応マニュアルを作ったりしているが、海賊版のもとになる盗撮の阻止に決め手を欠いている。

 検討を進めてきた自民党の「コンテンツ産業振興議員連盟」は週明けの会合で今国会に法案を提出する方針を決める。党内手続きを経て、公明党や民主党にも参加を呼びかける考えだ。

 摘発された海賊版DVDは1枚1000円程度と映画館の入場料よりも安い。2005年度に日本の映画産業が海賊版DVDなどで800億円を超える損害を受けたとの試算もある。

 止まらない海賊版の流通を憂慮して、米ハリウッドから政府の知的財産戦略推進事務局に、日本での海賊版DVDの取り締まり体制を強めるよう、再三にわたって要望書が届いている。

読売新聞 - 2007年2月10日