孤高の文士の足跡探る ゆかりの地・菖蒲町で企画展

「楢山節考」など特異な作品世界で知られ、今でも大勢のファンを持つ作家深沢七郎(一九一四~一九八七年)が今年、没後二十年となる。かつて深沢が自給自足の暮らしを営んでいた南埼玉郡菖蒲町で、深沢七郎展が開かれている。

菖蒲町は、「楢山節考」の外国語訳原書本などを展示した企画展を八月まで、中央図書館(同町菖蒲)で開催している。

 原書本は北埼玉郡騎西町の森田美術館から寄贈され、フランス語やドイツ語訳など計十冊。町民らから寄せられた深沢ゆかりの品も並べている。

 また深沢を取り上げた雑誌や深沢の逸話など、深沢に関する情報も募っている。同館には、深沢七郎展の規模を少しずつ拡充していく考えがあるためだ。

 同展担当の中央図書館職員、田口哲也さん(48)は「町をあげて深沢への広がりをつくり、まちおこしにつなげたい」と意欲的だ。

 これまで町は深沢に注目することはなかった。深沢の企画展も今回が初めて。名誉町民の称号を贈られ、町に生誕地記念園もある菖蒲出身で日本最初の林学博士、本多静六(一八六六~一九五二年)とは対照的だ。

 それは、精神の孤高を貫き、文壇で異質ともいえた作家の足跡につながるようだ。

埼玉新聞 - 2007/4/15